
米国のアクティブファンドが、相次いでETFを運用資産に組み込んでいるそうです。
焦点:負け続けの米アクティブ運用型ファンド、ETF投資積極化|Reuters
記事の内容を確認してみると、アクティブファンドがETFにガッツリ投資をしているわけではなく、キャッシュドラッグ対策としてキャッシュポジションの部分をETFで積極活用しているようです。
キャッシュドラッグとは、解約請求に備えて通常はキャッシュを保有しているのですが、フルインベストメントできないことによる運用成績の押し下げ作用のことを指します。
キャッシュをETFで積極活用するリスク
上昇相場の中で、解約に備えたキャッシュポジションを持つと、素晴らしい個別株に集中して投資しない限り、フルインベストメントしているインデックスファンドにパフォーマンスが劣ります。
例えば2006年にジャーナル・オフ・ファイナンシャル・マネジメントが公表した調査によると、キャッシュ保有は平均的株式ファンドの運用成績を年間0.70%幅低下させている。
逆に言うと、下落相場の中では、キャッシュポジションの比率の大きさだけ緩衝材の役割を果たしますから、フルインベストメントしているインデックスファンドよりパフォーマンスがよくなる可能性もあります。
その可能性を排除してまで、ETFを積極活用するアクティブファンドは、現在の相場から潮目が変わった場合は、100%に近い株式比率のまま下落していくことになります。
解約請求が多ければ100%+αなのかもしれませんね。
日本の流動性ではETFを積極活用できない事情がある
今回のReuters記事は米国のアクティブファンド事情でしたが、日本の投資信託環境を見てみると、まだそのレベルに達していないと言えそうです。
ETFはキャッシュほど流動性が高くないが、個別株よりは高いことが多い。
日本のETFはTOPIX・日経225型ETFやブル・ベアETFが人気ですが、その以外のETFはアクティブファンドはおろか、個人で活用するにも流動性の問題(出来高がない)があります。
2015年の3月には、MSCIワールド・インデックス連動ETFのUBS先進国株【1394】が登場しましたが、2015年5月26日の売買代金を確認してみると、34万5千円しかありません。
時価総額でみても2億円…あまりにも貧弱です。
日本のアクティブファンドが、米国のようにETFを積極活用するのは現実的に難しい。
東証を通り越して米国の海外ETFに直接投資をするほうが現実的かもしれません。
単純に国内の株式投資信託が、キャッシュドラッグ対策でTOPIXや日経225のETFを組み入れるのなら流動性の問題はなさそうですが、他のETFでは活用できません。
このままではアクティブファンドの未来は暗い
Reuters記事によると、アクティブファンドは苦境に立たされています。
アクティブ運用型ファンドがパッシブ運用型を大差で打ち負かすことができない状態は7年目に入った。
リッパーのデータによると、この間インデックス・ファンドとETFには4500億ドル超の資金が流入したのに対し、アクティブ運用型からは4300億ドルが流出した。
パッシブ運用型(インデックスファンド)に7年負けている。
アクテイブファンドからの資金流出が大きく、同程度の金額がインデックスファンドに流入。
こうなってくると、セクター(業種)や、規模(大型株・小型株)、運用スタイル(バリュー・グロース)などのETFを組み合わせたトップダウン型の時代になってきていて、個別株のリサーチをしてボトムアップ型アプローチで発掘していく昔ながらのアクティブファンドは資金流出が続く限り、本数は減っていきそうな気もします。
日本に限って言えば、ダメすぎる日本のアクティブファンド事情から、株式投信のインデックス比率は多いほど良いと考えていますが、投資信託の本場である米国はアクティブファンドに頑張ってもらいたいものです。
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