
東証マネ部!によると、東京証券取引所がETF市場の「マーケットメイク制度」を2018年7月2日の導入を目指して準備を進めているとのことです。
ETFが買いやすくなる「マーケットメイク」とは?|東証マネ部!
「コストメリットのあるETFを、長期の資産形成を目指す投資家にもっと活用してもらえるようにしたい!」という想いから、東証はETF市場の「マーケットメイク制度」を設計し、2018年7月2日の導入を目指して準備を進めている。
ETFが買いやすくなる「マーケットメイク」とは?|東証マネ部!より引用
さてさてマーケットメイクとは何なのか?
はじめて聞いた人はもちろん、マーケットメイクを聞いたことはあるという人も、キチンと知っている人のほうが珍しいかもしれません。
ETFは株式銘柄と同じように株式市場に上場されていて、市場が開いている間は、リアルタイムに動いている取引価格で常に売買されています。
買い手と売り手が拮抗していて取引が分厚いのなら希望通りの取引価格で売買が成立するのですが、実際は一部の人気ETFを除いて取引が活発ではないETFが多いのが現状です。

画像元 東証マネ部!より抜粋
どちらのETFの値段も1000円で、売買単位は1口としよう。ここで1口買うとき、流動性のある銘柄(上図の左)だと1001円で買えるが、流動性の少ない銘柄(上図の右)だと1010円で買わなければならない。この9円分が、流動性のないことによって余計にかかるコストとなる。
ETFが買いやすくなる「マーケットメイク」とは?|東証マネ部!より引用
そこでマーケットメイカーの登場!
ETFの買注文と売注文を常に出し続けるマーケットメイカーと呼ばれる専門業者が、東証のETFに流動性を提供してくれるのです。
マーケットメーカーにとっては、流動性の少なさからくる取引価格のズレを戻す価格差(裁定取引)による収益。
投資家にとっては、希望する価格で買えない流動性リスクが減少するメリット。
いままでも東証にはマーケットメーカーが存在していましたが、2018年7月2日からは、キチンとマーケットメイクが機能するように東証が手数料の割引などのインセンティブをマーケットメーカーに与えるようです。

画像元 東証マネ部!より抜粋
ちなみにマーケットメーカーとはどんな会社がやっているのか?
シンプレクス・アセット・マネジメントのETFコラムにマニアック過ぎる話題の解説があります。
マーケットメイカーとは誰なのか?|シンプレクス・アセット・マネジメント
証券会社や専業のトレーディング会社がマーケットメイカーとなっています。
なお、弊社のようなETFの運用会社がマーケットメイクもしているのかと思い問い合わせされる方も多いのですが、運用会社はETFの中身の運用をしているだけで、マーケットメイクはしておりません。
マーケットメイカーとは誰なのか?|シンプレクス・アセット・マネジメントより引用
コラムによると、昔は大手の国内証券会社も外資系証券会社もたくさんの会社がマーケットメイクに取り組んでいたのですが、リーマンショック後には米国で金融機関に対する規制が厳しくなり、リスクを取れない外資系証券会社が消えていったようです。
マーケットメイクのリスクを0にすることは現実的にはできません。トレーディングの資金調達コストもかかりますし、ヘッジにもコストがかかり、計算の前提が想定外の事態で間違うなどリスクがあります。薄利多売のビジネスですが、1回失敗すると大きな損失を受けることもあります。そのため、リスクを全く取れないとマーケットメイクを行うことは困難です。
マーケットメイカーとは誰なのか?|シンプレクス・アセット・マネジメントより引用
いまは欧州に本社があることが多いマーケットメイクを本業とする専業トレーディング会社と国内大手証券会社のようです。
裁定取引の場所として、マーケットメーカーにとっても魅力的な市場になって、「東証」「投資家」「マーケットメーカー」がWin-Win-Winの関係になってほしいですね。
NightWalkerさんのブログで興味深い記事がありました。
日興AMさんのETF投資懇談会 2018 その2 あなたの貸株が世の中の役に立っているという話|NightWalker's Investment Blog
- マーケットメイクをするには、マーケットメイカー側にETFの在庫がいる。
- なぜなら、投資家サイドが買おうとしたとき、マーケットメイカー側に玉が必要だから。
- しかし、そのためには、たくさんのお金が必要。保有リスクもある。
- なので、在庫を持たないで調達する方法も必要。
- しかし、貸株を活用して調達しようにも、なかなか流通していないのが実状。
日興AMさんのETF投資懇談会 2018 その2 あなたの貸株が世の中の役に立っているという話|NightWalker's Investment Blogより引用
どうやら貸株の有効活用がマーケットメイクに役立っているようです。
マーケットメイクのリスクにあるトレーディングの資金調達コストを下げるためには豊富な貸株によるETFの在庫がカギになっているのかもしれません。
以前に貸株による追加収益は全部ファンドに還元するべきという記事を書きましたが、東証ETFを投資対象にしているファンドが追加収益獲得のために貸株にまわすと、結果的に自身が保有しているファンドの流動性確保に繋がっているという卵が先か鶏が先かの話に見えてきました。
現在の主要インデックスファンドには東証ETFを主な投資対象にしているファンドはありませんが、将来的には新規参入するどこかのまだ見ぬ運用会社が「東証ETFを主な投資対象にして貸株による追加収益も全額ファンドに還元する」と宣言するファンドが登場したら面白そうです。
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